★嚥下圧と側切歯萌出部の隆起 Dr岡崎好秀ブログより

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 小児歯科医の増田純一先生から“小学2・3年生の頃、上顎側切歯の萌出部の口蓋側が隆起する。これは上顎の歯列不正のサインだ!”と教えていただいた。以来、学校歯科検診では、口蓋にも注意を払いながら診るようにしている。確かに、隆起は上顎中切歯の萌出前には見られない。しかし、中切歯の萌出後より次第に目立つケースがある。そして側切歯の萌出後には消失する。隆起があると、側切歯は口蓋側に萌出する。そう! これは、側切歯の歯。乳歯列において側切歯は、中切歯の口蓋側に位置する。
これが正常な位置に萌出するのは、舌圧によるものだろう。なぜなら嚥下の際、舌尖はスポットに当たる。

 まさに隆起の部分は、スポット付近に位置するためだ。側切歯の歯冠は、舌圧により徐々に前方に移動すると考えられる。さて、軟らかく水分の多い食物は容易に嚥下できる。でも硬くて水分の少ない場合はどうだろう?しっかり舌を強く押し当て、より強い嚥下力が必要だ。この嚥下力の強弱が、隆起の有無に影響するのだろう。
そう言えば、ダウン症児の顔貌の特徴に中顔面の劣成長があげられる。
彼らは舌の筋力が弱いために、十分な嚥下圧を作り出すことができない。すなわち、強い嚥下圧は、上顎骨の前方への発育も促している。
 このようなことを考え始めると、口蓋部の解剖が気になる。

 

 

 硬口蓋は、前方の上顎骨(口蓋突起)と後方の口蓋骨(水平板)からなる。しかし上顎骨の口蓋は、単一骨ではない。胎生期に前端にある一次口蓋は、両側の口蓋突起と癒合する。これで口蓋が完成する。
 一次口蓋は“切歯骨”であり、口蓋突起との癒合部は切歯縫合と呼ばれる。しかもこの部位は、スポットに相当し、完全に癒合するのは約30歳頃と言う。だとすれば、この部位は特に舌圧に影響を受けやすい。従来 下顎歯列弓は、舌と頬や口唇圧の調和が取れた位置に配列すると言われてきた。しかし上顎歯列弓も、舌による嚥下圧の影響を受けているのだ。